薬剤師国家試験解法シリーズ
第102回【問326】
輸液の問題にトライ!mEq(メック)ってなんだっけ
第102回薬剤師国家試験
【問326】
輸液の調製依頼があった。
生理食塩液、塩化カルシウム注射液(0.5mol/L)、塩化カリウム液(1.0mol/L)、50w/v%ブドウ糖注射液及び注射用水を使って調製する時、必要量として適切な組合せはどれか。1つ選べ。
塩化ナトリウム及びブドウ糖の式量は、それぞれ、58.5及び180とする。
以下の電解質を含む輸液を調製する。
Na+ 77mEq
Ca2+ 3mEq
K+ 20mEq
Cl- 100mEq
浸透圧を300mOsm/Lに調整し、総量を1Lとする。
【解き方】
前提となる考え方として…
★mEq(メック)は基本mol と同じと考えてよい。
(単位変換という意味で)
mEq はミリ当量Eq に、10^(-3)のm (ミリ)がついたもの。
mEq/L=mmol/L×電荷(イオン価)数
であらわされると定義されています。
例えば…
1 mmol/L 塩化カルシウム(CaCl2)は、Ca2+、Cl- に分かれるとそれぞれ何mEq/Lでしょう?
CaCl2 → Ca2+ + 2Cl-
1 mmol/L 1 mmol/L 2 mmol/L
に電離します。
Ca2+ : [mmol/L × 電荷数]=1 mmol/L × 2 = 2 mEq/L
Cl- : [mmol/L × 電荷数]=2 mmol/L × 1 = 2 mEq/L
簡単に、かつ感覚的にいってしまえば、
電気的に釣り合いの取れるものは同じ数で表しましょう
と考えるとわかりやすいかもしれません。
mol だと電荷によってバランスの取れるmol 数は変わってしまうけど、Eq(mEq)を使えば、同じ数なら何種類イオンが入っていようと電気的釣り合いが取れているのか取れていないのかが分かるようになっているのではないかと思います。
そして、問題を解くうえでもう一つ壁となって立ちはだかっているものは、Osm(オスモル)!
★mOsm(ミリオスモル) もmmol と同じととらえてよい!
(単位変換という意味で)
mOsm/Lは浸透圧を表す単位で、溶液1 L中に溶けている粒子数のことで、
mOsm/L=mmol/L×粒子数
で定義されていますが、基本は粒子数は1で計算することが多いので、
mOsm/L=mmol/Lととらえられます。
(電離した後のイオン一つずつで計算していくので。)
例)
イオン化しない物質(ブドウ糖、尿素、尿酸など)
1 mmol/L=1 mOSm
イオン化する物質(電解質)
1 mmol/L=(電離するイオンの数)×1 mOsm
CaCl2であれば、Ca2+ 1つ と Cl- 2つ の総計3つのイオンになるため、上記の電離するイオンの数は3になります。
さあ!ようやく問題を解き始めることができそうです。
①まず、生理食塩水の濃度から確認します。
生食は0.9(w/v)%ですから、
100 mLに食塩が0.9 g = 1000 mLに9 g (=9 g/L)
②生食の濃度をモル濃度に変換します。
g/分子量M = 9/58.5 = 0.15 mol/L
→Na+ = 0.15 mol/L = 150 mmol/L = 150 mEq/L
NaCl → Na+ + Cl- なので、
Cl- も同様に 150 mEq/L となりますね。
③Na+ を77mEq とるには生食をいくつ取ればいい??
1L:150 mEq = ?L:77 mEq
?= 77/150 = 0.51L ≒ 500 mL
→生食500 mLとれば良さそうです。
(実はこの時点で選択肢1~3はさよならできます。)
③'ちなみに500 mLとったときのCl- は何mEq入ってる?
Na+と同価なので、500 mL中に77 mEq含まれています。
④CaCl2 0.5 mol/L(=500 mmol/L) にはCa2+、Cl- は何mEq入ってる?
CaCl2 → Ca2+ + 2Cl-
500 mmol/L 500 mmol/L 2×500 mmol/L
Ca2+ = 500×2 =1000 mEq/L
Cl- = 2×500×1?=1000 mEq/L
ということになります。
⑤Ca2+を3 mEq とるにはCaCl2溶液をいくら取ればいい??
1L:1000 mEq = ?L:3 mEq
?= 3/1000 = 0.003 L ≒ 3 mL
→CaCl2溶液3 mLとればよいです。
(ちなみにこの時点で選択肢4、6が消えるので答えは5に決まってしまうけど、一応最後まで行ってみよう…)
⑤'ちなみに3 mLとったときのCl- は何mEq入ってる?
mEqはCa2+もCl-も1:1になっているから、3 mL中に3 mEq含まれています。
⑥KCl 1.0 mol/L(=1000 mmol/L) にはK+、Cl- は何mEq入ってる?
KCl → K+ + Cl-
K+ = 1000 mEq/L
Cl- =1000 mEq/L
となりますね。
⑦K+を20 mEq とるにはKCl溶液をいくら取ればいい??
1L:1000 mEq = ?L:20 mEq
?= 20/1000 = 0.02 L ≒ 20 mL
→KCl溶液20mLとればよいです。
⑦'ちなみに20 mLとったときのCl- は何 mEq入ってる?
mEqはK+もCl-も 1 :1 になっているから、20 mL中に20 mEq含まれています。
⑧今全体の液量ってどれくらいになったんだろ?
③500 mL+⑤ 3 mL+⑦ 20 mL = 523 mL
最終的にはここにブドウ糖注射液と注射用水を入れて1Lにします。
⑨ ⑤’+⑥’+⑦’してみるとCl- は523 mLにどれだけ含まれている?
③’77 mEq+⑤’3 mEq+⑦’20 mEq = 100 mEq /523 mL
さて、ここでイオンの各mEq が出揃ったので、浸透圧をみていきます。
⑩各イオンのモル濃度ってどうなっているんだろう。
ブドウ糖注射液と注射用水の比はとりあえずおいといて、1 Lにしたつもりで計算してみましょう。
Na+:77 mEq/L = 77 mmol/L
Ca2+:3 mEq/L ×1/2 = 1.5 mmol/L
(Ca2+は価数をかけた値が3だから、モルに直すときは価数で割る必要がある!)
K+:20 mEq/L = 20 mmol/L
Cl-:100 mEq/L = 100 mmol/L
(Cl-は価数が1だから、価数で割っても変化なし!)
⑪イオンだけの浸透圧ってどのくらい?
⑩のモル濃度を足してみると…
77+1.5+20+100 = 198.5 mOsm/L
目標浸透圧300 mOsm/Lに対して、
300-198.5 = 101.5 mOsm/L 足りない。
ですので、その分だけブドウ糖注射液で調節してあげれば良いですね!
⑫ブドウ糖注射液 50(w/v)%って何モル?何mOsm?
100 mLにブドウ糖が50 g = 1000 mLに500 g
(=500 g/L)
g/分子量M = 500/180?= 2.77 ≒ 2.8 mol/L
2800 mol/L = 2800 mOsm/L となります。
⑬ブドウ糖注射液をどれくらいとれば101.5 mOsmになる?
1 L:2800 mOsm?= ?L:101.5 mOsm
?= 101.5/2800?= 0.036 L ≒ 36 mL
→ブドウ糖注射液36mLとれば良さそうです。
できたー!!!\(^ ^)/
あれ、選択肢の5のブドウ糖注射液、そんな値になってませんけど…。
ということで、答自体はかなり初期の段階で出せますが、ブドウ糖注射液の値が不適切だったため、廃問となりました。
何度も解きなおせば、計算が苦手でもワンパターンの問題ですので、必ず解けるようになります。
これで本番にこういった問題が出ても安心ですね!
計算が苦手でも、むしろかかってこい、くらいのメンタルで行きましょう!
104回の国試では、芋づる式に記憶を引き出せることも大事だったように感じるので、この問題が解けるように練習しつつ、関連分野も復習することをおすすめします。
関連しそうな範囲
・輸液の分類きちんと整理できていますか?
・イオンの量で何号液か判断できますか?
など、自分で思いつく限りの関連分野もまとめて学んでしまいましょう。
イオンの配合量と輸液名の関連付けについても別記事で取り上げたいと考えていますので、乞うご期待ください。
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