第96回薬剤師国家試験
【問168】
固体薬物Aは拡散律速によって溶解し、溶解速度は以下に示すNoyes-Whitneyの式に従う。
dC/dt = kS (Cs-C)
dC/dt:溶解速度、k:見かけの溶解速度定数、S:固体薬物Aの有効表面積
Cs:薬物Aの溶解度、C:溶液中の薬物Aの濃度
固体薬物Aを円盤状に圧縮成形し、回転円盤法を用いて37℃で
溶解実験を行った結果をグラフに示した。
X軸、Y軸、Y切片として正しいものの組合せはどれか。
ただし、t=0のときC=0とする。
※選択肢省略(大切なのは選択肢がなくてもわかるようになることです
…というのは言い訳です。式の入力が面倒になってしまっただけです、ごめんなさい)
【解き方】
物理化学でよく出てくるNoyes-Whitneyの式。
なんとなくわからんでもないけど・・・。
この式を解くためには、後で出すノイエスの式を傾き -k・Sの形に
式変換できる必要がありそうです。
覚えるのもありだけど、他にもたくさん覚えなくちゃいけないことがあるから、
導けるものは導きたいよね。
これがNoyes-Whitneyの式です。
dC / dt = k・S・(Cs - C)
t:時間
k:見かけの溶解速度定数
S:固体の表面積
C:内部溶液中の溶質の濃度(食塩水なら食塩の濃度)
Cs:溶解度
つまりは溶解速度( v=dC / dt )を求める式です。
これをみて、また溶解速度定数とか出てきたよと思っていたら、
この中にも実は溶解速度を左右する因子が隠れていました。
実は見かけの溶解速度定数 k はD / V・δで表されます。
これを先ほどの式に入れると
dC / dt = D・S・(Cs - C) / V・δ
D:溶液の拡散係数
V:溶液の容積
δ:拡散層の厚さ
この k を解体した式をNernst-Noyes-Whitney式といいます。
Noyes-Whitney式は3要素は定数だからということで一緒にまとめて見やすくしてくれていたんですね~。
それはさておき、問題はNoyes-Whitneyの方を使います。
dC / dt = k・S・(Cs - C)
から傾きを-k・Sにするには、dC / dt をそのままにしてはおけないです。
とりあえず、両辺にdtをかけてみます。
dC = k・S・(Cs - C) ・dt
濃度に関する数値を左辺へ、それ以外を右辺にまとめることで、
積分するときにk・Sの形を作って積分することが出来ます。
ということで、両辺を(Cs - C)で割る。
dC / (Cs - C) = k・S・dt
ここでこの式を積分してみる。
∫(C,0){dC / (Cs - C)}=∫(t,0){k・S・dt}=k・S・∫(t,0){dt}
となるので、
-ln (Cs - C) + ln (Cs - Co) = k・S・t
これを整理して
ln (Cs - C) = - k・S・t + ln (Cs - Co)
…。
やっと出てきたぁ。
覚えた方が早いのかなぁ。
t=0 のとき、C=0とする、とあるので、Co=0
ln (Cs - C) = - k・S・t + ln Cs
この式をみると、
y軸はln (Cs - C)、
x軸はt、
切片がln Cs
とわかります。
ここまで見てみたものの、こんなの覚えらんないよ!!という人に、
ひとつ覚え方を共有できたらと思います。
(学術的な正当性は置いておきます。)
物理系薬剤において反応速度式の暗記は必須かと思います。
実はその式を生かして関連付けるといくらか覚えやすくなるかと思います。
ln (Cs = - k・S・t + ln Cs
★ちなみに、Nernst-Noyes-Whitney式には固体表面積のSが入っていますが、
固体の溶解に伴ってこれは減少するので、これを考慮した式がHixon - Crowell の式です。
これからの薬剤師国家試験は教科ごとの区切りなく情報を引き出せた方がよりスムーズに問題を解くことができるようになると考えられます。この問題が解けるように練習しつつ、関連分野も復習することをおすすめします。